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厨房までをまっすぐに見通せる配置と「空気感」を意識したデザイン

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錆びた鉄の棚に並ぶのは商品の焼き菓子と松野氏が収集したアンティークの数々

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菓子づくりに使用されたアンティークは、製作工程という工業イメージを彷彿とさせる

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工業的なデザインやかたちにもこだわった生菓子と、パンチングされた棚

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デザインコンセプトについて、深い理解を持った施工業者が拘った”工業的でアンティークな鉄釘の跡”はまさに職人技

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いわゆる”ネオン”看板にならないよう、光源が巧みにデザインに組み込まれている(数字の裏に光源を配し、鏡の反射光を格子鉄が中和するような印象)

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パリのアパルトマンの中庭にあるアトリエに差し込む光をイメージさせたガラスと調光(フランスから輸入した、厚み4cmのガラスを使用)

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打合せをするオーナーの松野明氏(中央)とデザイナー米川淳氏(左)

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サイドにも銀色の文字がデザインされたパッケージ

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松野氏がデザインを手がけたシールとともに、プロによるラッピングが施された焼き菓子

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松野氏がデザインした様々なパッケージが並ぶ棚

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ショーケースの手前上部に光源を設置した、斬新なデザインが主役たちを彩る


「1904 dix neuf cent quatre -職人と工業の融合-」後編
ミウラアヤ


―パティスリー それぞれのイメージ―
「イメージを壊すところからはじめました」。
中目黒にオープンしたパティスリー【1904】のデザイナー、米川氏より戴いた言葉である。
点在するアンティークのなかでも、鉄や銅などの素材は「衰退し、錆びていく」ものとしての風合いを特徴とするが、【1904】に実際多く使用されている配色「黒」と同様、特に菓子類を扱う店舗ではタブーに近い印象が強く、松野氏も当初は自問を繰り返した。
「普通は使わない」。
しかし、ではその「普通」とはいったいい何なのか、を発信し共に考えることが、デザイナーとしての最初のコミュニケーションだったという。ケーキもアンティークも松野氏自身が好きならば、全てを取り入れて居心地よくしてしまえばいい・・・。

松野氏と米川氏のイメージが出来上がった後も、使用する素材や型について、施工業者は「このガラス、普通こんなふうに使わないよ」、「ケーキ屋の柱ったら、この素材だろう」と、デザインと店の方向性を理解してもらうのに時間がかかったようだ。
鉄の錆びた柱、パンチングされた棚、パリのアパルトマンの中庭にあるアトリエに差し込む光をイメージさせたガラスと調光具合、素材それぞれの風合いを生かした細かなデザイン。
けれど、「こうあるべき」、「普通はそうじゃない」という従来のイメージ、先入観や固定観念を離れ、思想を本能的に理解しようとするそれぞれの職人が集まったとき、机上のデザインは生きたデザインとなる。

―意識は舞台によって変わる―
【1904】を既存のパティスリーを超えた舞台として捉えるとき、そこに関わる人間は全て役者となる。
例えば店舗内ではケーキや焼き菓子の製作風景(厨房)が見える。作り手は「見られる」ことで、馴れないながらも徐々に「見られながら製造する」ための作業工程を工夫し、使う道具なども淘汰されていくだろう。
また、搬入業者にとって便利な「搬入口」のないこの店では、どうしても、エントランスを通って調理場へ小麦粉や素材を運び込むことになる。
しかし、客のいる前で搬入することを避けるため、やはり「搬入時間」を考慮することになる。「自分はこうだ」ではなく、「この舞台に適した自分の役割」を考えるようになるのだ。
客は訪れるたびに、その舞台を内外から見つめ、日々どのように舞台が構築されていくのかを目の当たりにしていく。そして客の反応によって変遷を遂げる【1904】は、―完成形ではない―現在進行形の舞台なのだ。オーナーである松野氏の想いが、【1904】に関わる全ての人たちに伝わり、ここに関わることにそれぞれの喜びを見いだせるよう工夫され、常に変わり、成長を続けながら。

―職人と工業の融合 パティスリーのデザイン―
米川氏が大切にしているデザインのベースは、物事の本質を理解し伝える「合理性」を追求することと、「空気感」だという。オーナーパティシエである松野氏のイメージをデザインを通して翻訳し、使用する素材をして「そこに現れる奥行きや空気感を創り上げる」こと。
彼の云う意味が、撮影した店内画像を後で見直したときに、私にもはっきりと感じるとることができた。もちろん、センスの問題もあるかもしれないが、照明ひとつとってもプロカメラマン泣かせのデザインと空気があちこちに散りばめられている。
また、【1904】で使用されているパッケージは、全て松野氏のデザインによるものである。ロゴの配置や素材、色、形そのものなど、ラッピングを重視したデザインとなっている。

店舗イメージに始まり、パッケージの手触り、大きさなどの全てにおいて納得のいく「かっこいい」デザインに辿り着くまで繰り返されたオーナー松野氏自身の試行錯誤と、米川氏のデザインした空気感。その空間のなかで主役を演じるパティスリー(ケーキ、焼き菓子)が、小さなデザイン、カッティング、模様、色、そして見た目のイメージなど素材と食感とによって絶妙に表現されていることを、ぜひ体感して欲しい。


▼【1904】
住所:〒153-0043
    東京都目黒区東山2-5-8
電話番号:03-3792-1904
営業時間:10:00〜19:00
定休:毎週火曜日

▼松野 明:
パティシエ、パティスリー【1904】オーナー/「ル・ブラン」シェフパティシエを10年務め、東日本洋菓子作品展優勝、ジャパンケーキショー銅賞をはじめ多くの受賞歴をもつ。ケーキや焼き菓子のディテール装飾や形、パッケージなどを全てデザインしている。

▼米川 淳:
デザイナー、建築家/仏在住/東京芸術大学大学院卒業後、渡仏、パリラヴィレット建築大学に学ぶ。パリ16区の「TESSON TESSON」やパティシエ青木定治氏のフランス店舗デザインを手掛け、渋谷「BOULANGERIE BRASSERIE VIRON」についで、「1904」が国内2店舗目となる。






   
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