「プロデュース」ということ

2008/06/19
僕のこれまでの仕事は殆ど「依頼されたプロジェクト」ではない。いつも「やりたいこと」が生まれてそれを実現するために「プロデュース」して実現してしまう。だから嫌いなことは殆どしないで今日まで来ている。その代わり「やりたいこと、実現したい物」をいろいろな可能性を探って努力をする。実に沢山が実現したけれど、反面、実現しないで未だに粘っているテーマもいっぱいある。
デザインだけではなく、組織や事件のプロデュースもいろいろある。物学研究会もそうだし、デザイントープもそうだ。そして、新会社Kもその一つである。頼まれない構想をプロデュースするのが僕のやり方だからKの成立はいわば究極のプロジェクトである。やりたいことのできる組織としてKをつくったからである。Kの一番ポイントとなっている思想は「売れる物ではなく、つくりたい物をつくる」ことだと言ってきた。そうすれば「必ず売れる」と信じてもいる。

バルス東京の高島社長と会ったときに彼の特殊な感覚として「生活者のこころを聞く姿勢」を感じて感動したのだが、どう考えても僕にはそれがない。ようするに僕の手法は「自分のなかに必ず生活者のこころがあるはずだ」それを聞けばいい・・と思っているところがある。もちろん高島さんのその感覚が今でも気になったままだけれど・・・。

それはさておいて、Kは何とか僕の直観通りに動いている。Kの準備期間の一年を過ぎて、今年の3月からぼちぼち営業活動が始まった。営業というより広報と言った方がいいのだが、要するに「買ってください!」ではなく「こういう物があります」といろいろな人に会い、いろいろなチャンスで知らせてきた。展覧会だったり、戸別訪問型の広報だってある。予定通りに、最初からニューヨークの、5月にはヨーロッパの、6月には台湾のディストリビューターが殆ど決まりつつある。中国も動きがあり、香港はもう少し仕掛ける必要がある。メーカーをやる以上、海外での販売は、70%はいきたい。

今日はちょっと毛色の変わったプロデュースのケースを紹介しよう。ピアノコンサートのプロデュースである。以下がそれである。

豊田裕子のピアノコンサート「ベーゼンドルファー物語」

豊田裕子のピアノコンサート「ベーゼンドルファー物語」が川崎市市民ミュージアムで開催される。7月19日(土)、開場は18:00、開演は18:30である。建築家の僕なのだが、ひょんなことからこのコンサートの切掛けをつくることになった。広々とした多摩川沿いの川崎市市民ミュージアムの吹き抜けの「中央ホール」での演奏会である。ステージにつながる屋外テラスでワインブレークがあり、もちろん僕も行っている。のんびりと土曜日の夕暮れから散歩のつもりで来て欲しい。

申し込み
豊田音楽事務所: ishimaru@wakuwakumusic.jp

不思議な経緯なのでそれを記します。
■職人技がつくりあげる「ベーゼンドルファー」
1828年、イグナーツ・ベーゼンドルファーによってウィーンで創業されたピアノである。作曲家で超絶技巧のピアニストであったフランツ・リストの激しい演奏に耐え抜いたことで有名になり、多くのピアニストがこのピアノの虜になって世界の3大ピアノの一つになった。経営不振から現在はヤマハの支援を受けて再生している。今回の演奏会ではベーゼンドルファー・ジャパンの協力で調律を担当していただいてもいる。株式会社Kでも職人主義を謳っている僕としてはこのベーゼンドルファーの職人主義は嬉しい。

■川崎市市民ミュージアムがもつ「ベーゼンドルファー」
160年の歴史を有するベーゼンドルファー社の40,000台目にあたるメモリアルピアノ(モデル290PM、フルコンサートグランドピアノ「インペリアルシリーズ 鍵盤数97鍵」)が川崎市市民ミュージアムにある。川崎市長、阿部孝夫さんとある結婚式で偶然に出会ってそのことを知る。その後、市長の計らいで多摩川の河畔にある公園にあるミュージアムを訪れて館長さん、副館長さんとも親しくなる。

■ 豊田裕子さんと「ベーゼンドルファー」
2002年にウィーンのコンチェルトハウスでのリサイタルで、ベーゼンドルファーのピアノとの衝撃的な出会いを経験し、その後、2005年にはウィーンで、世界でたった一つのベーゼンドルファー・クリスタルグランドを演奏した経験を持つ豊田裕子さん。豊田さんは僕の出版記念パーティーで演奏をしてくれたピアニストなのですが、川崎市市民ミュージアムのベーゼンドルファーをこの人に演奏してもらおうと思い立つ。

■ スワロフスキーの「ベーゼンドルファー」
豊田さんの演奏したクリスタルグランドは実はスワロフスキーのクリスタルだった。スワロフスキーは僕の友人であるデザイナー吉岡徳仁さんが銀座のショップデザインなどをしていて不思議なつながりである。彼の紹介でスワロフスキーを訪れ、このコンサートでもスワロフスキーが演奏会の装身具を提供してくれることになった。スワロフスキーもベーゼンドルファーと同様にオーストリアの企業である。

■豊田裕子の「ベーゼンドルファー物語」
ある知人の結婚式で川崎市の阿部市長と出会い、川崎市市民ミュージアムのベーゼンドルファーのことを聞き、以前から友人であるヤマハのデザインセンター長の吉良さんのことが頭に浮かぶ・・・、そして、3年ほど前に僕の出版パーティーに駆けつけ、演奏してくれた豊田さんのことが頭をよぎる・・・。こうして僕の中にベーゼンドルファーが核となって川崎市とヤマハとスワロフスキーと豊田裕子さんがつながることになった。ピアノコンサート「ベーゼンドルファー物語」がここから始まった。ばらばらの情報がばらばらだった出来事が一つになって、「ベーゼンドルファー物語」という演奏会が生まれることになった。多くの人々の力で実現したのです。

【開催概要】
豊田裕子のピアノコンサート「ベーゼンドルファー物語」
場所:川崎市市民ミュージアム
日時:7月19日(土)、開場18:00、開演18:30
お問合せ: ishimaru@wakuwakumusic.jp

プロデュースとはこうして無理矢理ではなく、時の運と成り行きにちょっと力を加えることで実現させることなのである。