DESIGN TODAY
世界の最新デザイン事情
ベルリンのクリエイターたち part Ⅱ
Yuna Yagi
2009/01/23

家具デザイナー
『ここが僕のショールームだよ』と、いつもの笑顔で案内してくれた先は、家具デザイナーのライナー・シュペールの住むアパートの3階。通常の家具ショールームでは、シンプルで無機質な空間に置かれる家具。それもまたかっこいいのだけれど、ここでは生活の中に自然に使われている家具が暖かく迎えてくれた。


▲ コンクリートで作られたキッチン

▲ 押すと開くようにデザインされている
アパートの部屋に入ると、南向きに大きく配置された窓から気持ちよく日が差し、何年も使われ続けて光沢のある幅広いフローリングに当たった光が反射して、アパート全体を明るくしていた。そこに置かれた家具のひとつひとつがそれぞれの生活空間で静かに来客を待ち受けている。部屋は、キッチン、バスルーム、リビングルーム、ゲストルーム、ベッドルームに分かれている。プロトタイプとして制作した家具を各部屋ごとに生活の中に置き、毎日触れる事で、その機能や質感が試され、飽きのこない、肌に馴染む使いやすいデザインへと進化を遂げてゆく。限定品や、キッチュなデザインプロダクトやコンセプトが強い、派手な配色の家具などが流行る傾向があった反面に、ライナーのように素材感や使いやすさを重視したシンプルなデザインがある。さらに、彼のデザインには独特の遊び心が加味され、飽きがこなく、かつ使い手に笑みを与えてくれる。

▲ ベルリンのセレクトショップ"KONK"の家具

▲ 拾ってきた家具でリメーク
ライナーのデザイン手法には、日本の伝統工芸の本質に近いものがあると思う。それは、質の高い『日常』を進化させた、生活の知恵である。伝統は隔離され、保存するものではなく、常に人々の生活とその時代の背景と共に進化してゆくもの。全てのものは、常に人の肌に触れ進化、洗練され、つくられてきたのではないだろうか、とライナーの家具に触れながら、そんなことを感じた。『家具は触って感じるもの』と、ライナーは言う。人肌に馴染んだ家具は、主張しすぎず、飽きがこない美しいプロポーション。更
に機能性と遊び心が備わったライナーの家具は、部屋の主役にならないように配慮されている。まるで映画の主人公を支える最良の名脇役のようだ。
ー プロフィール ー
ライナー・シュペール/RAINER SPEHL
ドイツ・ノイス(Neuss)出身
ロイヤル・カレッジ・オブ・アート大学院(ロンドン) 卒業
卒業後、ロンドンでナイキなどのエキシビジョンの展示デザイン等に関わる。
2003年、ベルリンに移り、木素材にこだわった家具を中心に、家具やプロダクトの他にもセレクトショップやカフェの内装を手がけ始め、サッカーボールの照明器具、2008年から発売になったMac Book Proケース、公共用にベンチのデザインを手がけるなど、幅広く活動している。
http://www.rainerspehl.com/


▲ ベルリンで開催されたトレードショーでのナイキブース(2004年)


▲ “Coming Home” サッカーボールをモチーフにした照明器具
Collaboration with Martino Gamper(http://www.gampermartino.com/)
Collaboration with Martino Gamper(http://www.gampermartino.com/)


▲ “Wooden Laptop Case" パソコンを 取り出すと置く台としても使える(2008年)



▲ ”Urbanis” ベルリン・アレクサンダー広場地下街にて
Collaboration with Alexis Oehler, produced by betonware
Collaboration with Alexis Oehler, produced by betonware
八木夕菜/Yuna Yagi
ベルリン在住/建築家・アーティスト




