トルソー/TORSO −その2−

2009/02/02
 毎日とはいかないが、早朝、出来るだけ歩くようにしている。このきりっと寒い朝に恵比寿ガーデンプレイスを早足でウォーキングするのは、実に気持ちがいい。殆ど、黙々と全身を使って歩いている。
 今思うと、以前は歩き方が下手だった。歩きにも技術があるな、と近頃思う。毎日歩き方を工夫している。
 身体というものは、もう長い間付き合っているのだが、十分には理解していないことが次第に分かってくる。いろいろ発見があったのだが、先ず歩くというのは脚のためだと思っていたのだが、腸にとてもいいことだ。脚の運動のように見えて、実は内蔵にいい刺激を与えている。帰ってくると実に便通がいい。歩きながら便意を催したりもする。人は歩くことで、内蔵が自然に活動していたのだ。
 もう一つ、歩いていると、脚を腰やお腹で動かしていることに気付かされる。手も同様に、手を振っているだけではなく、実は肩胛骨から手が動いている。正確に言うと、脚も手も、胴体まるごと動かすことで、歩いていることが分かってくる。
 以前、香港のホテルのバスルームで足の小指を角にぶつけて、3日ほど痛んだことがある。たかが小指なのだが、その間、ちゃんと歩くことが出来ないので、びっくりした。要するに、足の小指でも、歩行に何らかの重要な役割を果たしていたということである。
 気持ちよく、まさにこの歩き方が一番いいな・・・と思う歩き方をしていると、確かに足は腰や腹筋も動かして、その延長に肩胛骨が動き、その先に腕が振られている。その全身の動きが、歩行の姿であることが身体で分かってくる。
ちなみに、エンジェルの羽はどこから生えているかを、ヨーロッパの美術館で彫刻を観察したことがあるのだが、羽は肩胛骨から生えていた。だから腕と羽は共存できたのだ。
 話しを戻すと、手と脚は身体に支配されている。肩胛骨も腰も腹筋も含んで身体の本体、トルソーは全てを支配する大陸のようなもの・・・身体の母体なのだ。
 ゴルフのスイングで長年悩んできて、近頃すっかり悩まなくなったのはこのウォーキングでの発見と同じことだと、歩きながら気がついた。
 僕は、今はスウィングに悩みがないのだが、それはスウィングをクラブや腕や脚をないものと思って、身体だけで、要するに、トルソーだけで振ることを覚えたからである。要するに、ゴルフのスイングは誰でもクラブで打つとか腕で打つとか考えてしまうから、ボディーで打てないだけなのだ。僕は、今では自信をもってスタートホールからナイスショットする。いやいや、決して上手くはないし、スコアも良くない。年に4,5回だけしかしないゴルフで、いいスコアが出るはずはないし、
年寄りの僕に飛距離が出るはずはない。ここで言いたいのは、ゴルフのスウィングもウォーキングもトルソーでやるということだ。
 ところが、人間はどんどん文明を進化させて、車に乗るし、デスクに向かって仕事をする。観察してみると、トルソーは殆ど動かしていない。腕だけでコンピュータを叩き、脚と腕だけで車を運転する。首だって前を向いている時間がほとんどである。運動をしない限り、現代生活ではボディーは「どでん」とあるだけだ。だから、お腹が出たり、男のくせに乳房が脂肪で大きくなる。肩と肩胛骨は凝り、腰は痛み始める。脚の付け根と手の付け根がおかしくなる。腸も滞り、下剤が必要になる。
 やはり、トルソーは人間の根源なのだ。本体なのだ。
(2009, 1,25)

<写真>
トルソーの部分、形ではなく、質感がいい。

『物語 ーもの・がたりー』
“ZO”という椅子が出来た。この椅子は、象に似ているからそう名付けたのだが、太い脚のお尻のところが可愛い。まるでトルソーのような椅子である。サテライト・ショップを見ていただきたい。
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