DESIGN TODAY
世界の最新デザイン事情

一本のストローから・・・オーストリア滞在記 part Ⅰ 
by sound artist mamoru

2009/03/18
サウンドアーティストのmamoruさんは、約4ヶ月半の予定でオーストリア各地のアーティスト・イン・レジデンスに滞在し、制作活動に励んでいる。mamoruさんのオーストリアの日々を、数回にわたって紹介。
▼ 機材の数々
 
▼ CD "twelve, three"
      
 
▼ クレムスの街並
 
▼ ワークショップの様子
 
▼ etude no.7
 
▼ etude no.12
 
 サウンドアーティストmamoruです。主に現代
アートと呼ばれるシーンで、音を素材とした作品
を発表しています。音響機材やコンピューターを
用いて、音を空間にレイアウトする作品・仕事も
ありますが、最近は日常的な音や日用品から生み
出せる音、それらの組み合わせで作る音オブジェ
のような、よりアナログな作品に取り組んでいま
す。発表の場は、国内海外を問わずギャラリー、美術館、アートスペースなどです。生音の音具と電子機材を利用したライブパフォーマンス、ワークショップや大学などで講義したりもしています。
 私がアーティストとして関心があるのは、人間の原初的な振る舞いで、音を出すという行為も、音を出す道具を作るというのも、そこにつながるものがあります。なので、民族音楽などの楽器や背景をリサーチすると同じ臭いを感じますが、現在の身の回りにあるものでアプローチしたい、という思いが強く、そういった私的な動機が今の経済・社会でどういった意味をもつのか、というのも気になるところです。

 さて、現在、オーストリア・クレムスのアーテ
ィスト・イン・レジデンスに滞在し、活動してい
ます。「アーティスト・イン・レジデンス」とい
うのは、各国、各州、または市町村レベル、また
は民間でも取り組みが広がっているシステムで、
アーティストを一定の期間招聘し、制作環境や住
環境を提供し、地元での文化交流、国際化などを
狙ったものです。比較的に、欧米ではアーティス
トが作品を通して様々な問題に関して疑問、観察、視点を提供するという社会的な役割が認知されているためか、滞在するということ自体が目的になっているものも多いですし、他には、展示や公開制作、ワークショップなど、ある程度の成果を条件としているものもあります。有給、無給などは、場所によってそれぞれで、今回の私のように招待や推薦の場合、そのほか公募の場合などがあります。
 今回のオーストリア滞在は、大きく分けると2
つに分かれます。1月末から4月頭まではウィーン
からドナウ川沿いに電車で1時間ほどの町、クレ
ムスにあるアーティスト・イン・レジデンスに滞
在しています。主な目的は、高校生対象のワーク
ショップと、クレムスで毎年開かれている音楽祭
“IMAGO DEI 2009” (http://www.klangraum.at
/content
)への出演で、そのほかの時間は制作に
費やします。今月の21・22日は、オランダ・LE-
IDENの市立美術館、劇場、アートセンターの共催
でひらかれるアートフェスティバルにて展示、パ
フォーマンスすることになりました。4月には、
ウィーンのミュージアム・クオーター(MQ)のレジ
デンスに滞在し、個展とパフォーマンスなどをす
る予定です。5月末には、ウィーンでは「日本オ
ーストリア交流年」という公式行事に関連したア
ートイベントに参加し、近代美術館(MUMOK)な
でパフォーマンスをする予定です。

 クレムスでの滞在のそもそものきっかけは、結構、さかのぼるのですが、随分と前から私の音楽よりの作品に興味を持ってくださっていた英国在住のエージェントの方が、欧州の現代音楽のフェスティバルなどに私の資料を送って下さっていた
んです。その甲斐あって、民俗音楽や実験音楽を
とりあげているクレムスの音楽祭から声がかかっ
たわけです。ここの企画は、規模も内容も面白い
フェスで、評判も良く、私としては良いチャンス
になると思って前向きに交渉を進めました。途中
交渉が頓挫しかかったりもしたのですが、最終的に呼ばれる決め手になったのは、去年から発表を続けている”etude”という、日常品から発生する
音を作品化するシリーズです。“etude”の資料と
作品の実物(etude no.7)を送ったところ、反応が
がすぐに返ってきて、クレムスのアーティスト・イン・レジデンスに滞在することになったのです。
 実はただのストローなのですが、5年ほど前からストローの音を作品で使っていた流れで、ちょうど一年程前ですが、思い立って自分のオリジナルストローを、とある会社に発注して生産(?)したのですが、飲料を吸い込むためではなく、音をだすためのストローということです。(ちなみに初回ロット500本、現在第2版です。)構造はまったく普通のものとかわりませんよ。ただ使用方法が違うだけです。息を細めて優しく吹くと、高くて透明感のある音がでます。しかも、ランダムに変化するため、妙に神秘的で。(大体の人は簡単に音が出ますよ。)物は変えずに意味を変える、というシンプルな意図に沿うようにパッケージして作品化もしています。私としては「価値がない」と思われている物が、アートというフレームで切り取られ、既存の使用法・意味を離れることで何か変化するだろうか、という問いかけを生み出したい
と思っています。
(etude no.7 ▶ http://homepage3.nifty.com/
afewnotes/etude_7_jp.html


 さらに、後半のウィーン滞在も友人のアーティストに紹介されたオーストリア人のオーガナイザ
ーの方に、“etude no.12”というサランラップの
音を取り上げた作品を(居酒屋で)プレゼンしました。泡がはじけるような、レコードの針の音のような、なぜか落ち着く音です(もちろん、人によりますが・・・)。これが気に入ってもらえたみたいで(写メを撮りまくっておられました)、しばらくして正式に近代美術館(MUMOK)での
イベントにも参加してほしいとの依頼をいただきました。クレムスの滞在が切れる4月頭からイベントが終わるまでの2ヶ月間滞在する場所を用意してくださいました。
(etude no.12 ▶ http://homepage3.nifty.com
/afewnotes/etude_12_jp.html


 そんなわけで、ストロー1本、サランラップ少々で約4ヵ月半のオーストリア滞在とな
ったわけです。もちろん、自分の作品の価値を信じていますが、当然、偏った考えでもあるわけで、それにも関わらず、伝わって、ちゃんと評価してくれる人、場所があるというのは、有難いし、面白いもんだな、と思います。


▶ sound artist mamoru HP
http://www.afewnotes.com
▶ sound artist mamoruブログ
http://blog.livedoor.jp/soundartist77/

Written by sound artist mamoru
オーストリア・クレムス在住